The moon princess

Once upon a time・・・・・・
懐かしい顔。懐かしい声。懐かしいのに、変わってる。
皆、お医者さんになったんだね。
夢を叶えたんだね。私が出会った7年前は、模試毎に一喜一憂して、大学に受かってもないのに、大学の噂してたよね。
外見は少し若返ったくらいに思ったよ。
アメリカ帰りの優等生は、いきなり握手だった。さすがだよ。いつも人とは違うことをしてる。一番賢くて、いつも一番で、かっこよくて・・・ワイルドで。私もカテキョして欲しかった。ワールドカップ以来かな。その間に、人間の壁になって、アメリカへ行って、国境無き医師団希望だったもんね。さすがだよ。でも、家族のことも考えて、ここにいることの方が、私はいいと思うよ。国境無き医師団なんて危険すぎる。ずっと日本にいて欲しい。いつでも会える距離にいて欲しい。いつも頂く梅は、めちゃくちゃおいしい。ありがとう。憧れる。そんな生き方も、その賢さも、無茶も。きっとそのまま努力を続けたらもっと上に行っていた人かもしれない。あなたはその全てを振り払って、一番輝いてる。
久しぶりに外国人と食事。英語しか通じない。難しい。たわいもない話。クロエの鞄を買おうと思ったのに、too expensiveだったから、買えなかった。免税だから、少しは手が届くかと思ったのに・・・。かわいい。いつ会ってもかわいい。婚姻届を出していないカップル。一緒に住んで、夫婦同様に生活している。いわゆるヨーロッパスタイル。
きっと塗りすぎた色って、白に戻れない。
結婚式にもウエディングドレスにも興味はない。もちろん披露宴なんてしたくない。もし、わがままがきくなら、私もヨーロッパスタイルで。婚約指輪も結婚指輪もいらない。一緒にいれたらそれでいい。形式ばったことが嫌い。皆はどうして、披露宴をするのだろう。本家の長男だから?親孝行のために結婚式をするらしい。親の夢らしい。そんなものは、私にはいらない。もっとワイルドに、もっと奇抜に生きてもいいのなら、好きな人と、好きなだけ、好きな場所にいる。それがいい。それだけがいい。
でも、こんなワイルドな意見を言ったら、ダメかな。どんな人とどうなるかわからないものね。言われるままにいる方がいい。これから出会う人のために、内緒内緒。
五年で英語が話せるようになった人に聞いた。うちの会社の人は、日本語を1年でほぼ完璧に話せるようになってるよ。
それはどうして?日本人と会話をする機会が多いの?
いや、真剣なんだよ、皆。真剣になれば、一年で充分話せるようになるってことだよね。
もう一年になる私。翻訳の訓練を受けて、一年。まだまだ、まだまだまだまだ。真剣じゃない。
確かにそうだろう。そこまで登りつめた人には、わかるのだろう。私がふにゃふにゃだらだら生きていることを。
真剣さが足りない。確かに。
ここは温室だ。自分がどこにも登れていないことに気づくこともさせない。だから、彼は兄が好きなのだろう。恥ずかしい人間になってしまってる。まだ、間に合うだろうか。
思う。今、努力していない人は、どうやって生きていくのだろう。時々思う。フリーターを65歳までするのだろうか。無職を65歳までするのだろうか。頼るものがなければ、生活と仕事を直接天秤にかけて、働くことはできるのだろうか。ただ、わかる。そんな人には、この人がいいという、譲れない気持ちができるのだろう。無理だな。私には。似合わない。ショートヘアも。形式も。
ここへは持ち込まない。そう決めたんだ。
私の存在は、大きく迷惑をかけたのだろう。派閥が違う。ラベルを貼られている感じ。
大学のときの先生が言ってた。私はこの言葉が好きだ。
「自分が一番にならなくていい。あなたがすばらしい部分を一つでももって、それを周りに提供すれば、それはいずれ、あなたの価値になる。」
イタリア帰りの人だった。その先生が引退しなければ、私はまだ、建築をしていただろう。
一年前と、今は、ぜんぜん違うもん。だから、今と、来年もぜんぜん違うはずなんだ。
耳をそぐ、ゴッホの気持ちが、少しわかる。
悲しいページなんて、なかったことにしようとして、いくつも色を重ねてしまった。